「サブリースが付いた部屋は、そもそも売却できないのではないか」
新築ワンルームマンション2戸を手放すと決めたとき、私が最初に抱えた不安が、これでした。
結論から書きます。売却できます。私は2024年に、サブリース付きの2戸を売り切りました。ただし「サブリースを付けたまま売るのか、外してから売るのか」で、話はまるで別物になります。私は外す道を選び、解約料を払い、売却と並行して半年待ちました。
この記事は、制度の解説ではありません。実際に契約し、解約し、売り切った私の記録です。手元の契約書と、当時の書類に残っている範囲のことだけを書きます。
サブリースのまま売るか、解約してから売るか
入居者がいる状態のワンルームを売ることを、オーナーチェンジといいます。買い手は、そこに住みたい人ではありません。家賃収入を目的にする人や会社です。
ここでサブリースが効いてきます。サブリース付きのまま売った場合、買い手はその契約ごと引き継ぐことになるからです。
買い手の側に立ってみると、意味がよく分かります。オーナーチェンジで部屋を買う人は、その部屋が生む家賃から値段を逆算します。ところがサブリースが付いていると、その計算に入るのは、入居者が払っている家賃ではなく、サブリース会社から支払われる保証賃料です。
保証賃料は相場より低いのが普通で、しかも契約の条件によっては見直されたり、減らされたりします。同じ部屋でも、計算の材料が変われば答えが変わるわけです。買った瞬間から自分ではどうにもできない条件を抱えることになるのですから、買い手に敬遠されるのは当然です。サブリース付きの部屋は売却できない、と言われるようになった出発点は、ここにあります。
そして私が結んでいた契約書にも、物件を第三者に譲渡するときは、サブリース会社の定める条件に従って契約上の地位を買主に引き継がせること、とはっきり書かれていました。つまり、外して売りたいなら、先に解約するしかない。私が「解約してから売る」を選んだのは、心情の問題ではなく、契約書がそういう構造になっていたからです。
そして、外すかどうかは金額にも表れました。私が一括査定で受け取った査定額は、いちばん高い会社といちばん低い会社で800万円の開きがありました。そのいちばん低い金額を出してきたのは、私にこの部屋を売った販売元の会社でした。
理由を確かめたわけではないので、あくまで私の推測です。ただ、サブリースを外さない前提の見立てだったのではないか、と今も思っています。査定のときの詳しいやり取りは、一括査定の体験談にまとめてあります。
媒介契約の次にやったのは、販売元への解約連絡だった
私は、売ると決める前から「サブリース付きは不利になる」ということだけは知っていました。動画や体験談を自分で調べていたからです。だから一括査定の問い合わせの段階から、各社に「サブリースを解除してから売りたい」と伝えていました。誰かに助言されて決めたのではなく、自分で調べて決めたことです。
そして、専属専任媒介契約を結んだ担当者から、最初にこう言われました。まず販売元に連絡して、サブリースの解約手続きを進めてください、と。
売却活動よりも先に、解約が来る。この順番は、当時の私には少し意外でした。けれど契約書を読み返すと、それも当然でした。私の契約書には、売却を「検討するとき」には通知する義務がある、と書かれていたのです。売った時ではなく、考え始めた時点です。この条文の話は、契約書2通を全条文で読み比べた記事に書きました。
もうひとつ、担当者から言われていたことがあります。サブリースの解約は、拒まれる可能性もありますよ、と。動画や体験談でも、解約に応じてもらえない、違約金が家賃の半年分や1年分といった高額になる、という話は見かけていました。私自身が体験したわけではないので伝聞として書きますが、そういうケースがあるらしい、という不安は抱えたままでした。
私が身構えていた理由も、そこにあります。サブリースでは、部屋を貸しているのがオーナー、借りているのがサブリース会社という関係になります。そして借地借家法が守るのは、借りている側です。つまりこの契約で法律に守られているのは、入居者でもオーナーでもなく、サブリース会社のほうでした。「サブリースは解約できない」「だから売却できない」と言われるのは、この構造が理由です。この仕組みはvol.4に詳しく書きました。
結果として、私の解約はあっさり通りました。もめることも、引き止められることもありませんでした。今になって思えば、私はかなり運が良かったのだろうと思います。
解約は申し出から半年後。だから売却と同時に走らせた
私の契約書に書かれていた解約の条件は、2つでした。6ヶ月前に伝えること。解約料として保証賃料の1ヶ月分を払うこと。この条件そのものについては、vol.4に詳しく書いています。
問題は、6ヶ月という長さです。
買い手が見つかってから解約を申し出ていたら、その買い手を半年待たせることになります。それは現実的ではありません。だから私は、解約と売却を同時に走らせました。媒介契約を結んだのが2月、そこですぐ解約を申し出て、2戸の売買契約が3月15日、決済が6月28日。解約の効力が生まれるのは、決済よりも後です。
そのため解約料の精算も、決済のあとになりました。売却が終わった後の7月と8月に、私に支払われる保証賃料から差し引かれる形で処理されています。実際の金額は1件目が108,720円、2件目が75,780円でした。
部屋はもう自分のものではないのに、サブリースの精算だけがまだ続いている。当時の私は、その状態を少し不思議な気持ちで眺めていました。決済の日にすべてが終わるものだと思い込んでいたからです。実際には、決済のときに交わす精算書のなかで、この先に発生する家賃のやり取りまで、売主と買主のあいだで整理されていました。売却の手続きは、決済日で線を引いて終わりにはならない。これは、やってみるまで知りませんでした。
手続きを終えてみて、いちばん想定外だったのはここです。私はサブリースの解約と売却を、別々の手続きだと思っていました。実際には、ひと続きの一本の流れでした。解約が売却のスケジュールを決め、売却の決済日が解約料の精算時期を決める。切り離して考えることは、最後までできませんでした。
賃貸中の部屋は、中を見ないで値段がつく
もうひとつ、賃貸中ならではのことがあります。査定で部屋の中を見てもらえないことです。
入居者が住んでいる以上、勝手に内見はできません。ですから査定は、書類と市場データで見積もる机上査定になります。私が用意したのは、賃貸借契約書とサブリース契約書の2通だけでした。
投資用のワンルームは、内装の印象ではなく、家賃がいくらで、どんな契約が付いているかで値段が決まります。だからこの2通が、そのまま査定の材料になるわけです。日当たりでも、水回りの新しさでもありません。
そして、この賃貸借契約書を取り寄せたことが、私にとっては別の意味を持ちました。貸主として書かれていたのが、私が契約した保証会社ではない、知らない会社の名前だったからです。私の部屋が二重サブリースだったと分かったのは、この瞬間でした。その経緯はvol.4に書いています。売るための書類が、買ったときの真実を教えてくれた、という順番でした。
買い手が見ていたのは、部屋ではなく数字だった
私の2戸は、東京23区内と横浜市内にありました。どうせなら2戸まとめて売りたいと考えて、セットでの売却を希望しました。
返ってきた反応は、ほとんどが「そちらはいらない」でした。関心は23区の物件に集中し、横浜のほうには誰も乗ってきません。結局セット販売はあきらめ、1戸ずつ売ることになりました。
ところが、最終的な収支でプラスで着地したのは、誰にも欲しがられなかった横浜の物件のほうでした。人気のある23区の物件は、残債との関係で持ち出しになっています。その数字の全体像はvol.6に書きました。人気のあるエリアであることと、自分の収支が合う物件であることは、まったく別です。
買主は、2戸とも個人ではありませんでした。どちらも不動産を扱う会社、つまり法人です。しかも2戸は別々の会社に売れています。奇妙なことに、その2社は同じビルに入っていました。売買契約を結んだのは、2戸とも同じ日でした。
自分で住むために部屋を買う人は、日当たりや駅からの距離を見ます。けれど私の部屋を買ったのは、そういう相手ではありませんでした。家賃がいくらで、どんな契約が付いていて、その数字が自分の事業に合うかどうか。見られていたのは、それだけです。サブリースを外すかどうかが査定に響いたのも、結局は同じ理由なのだと思います。
その2社が何をしている会社なのかを調べたのは、実はごく最近のことです。どちらも、会社員や公務員といった個人に向けて投資用のワンルームを販売する不動産会社でした。一方は投資用マンションの買い取りを事業のひとつに掲げ、もう一方は築浅の中古を仕入れて売ると明記しています。
つまり私の部屋は、私に部屋を売った会社と同じ業態の相手に引き取られたことになります。おそらくはまた、誰かの「資産形成」の入り口に並ぶのでしょう。買ったときの私も、そうやって並んでいた部屋のひとつを選んだのでした。出口だと思っていた場所は、誰かにとっての入口でもあった。売り終えてしばらく経ってから、私はそのことに気づきました。
これから売る人へ|契約書の3か所を先に開いてください
売ると決めたあとの私が、いちばん最初にやるべきだったのは、契約書を開くことでした。順番でいえば、査定を頼むよりも前です。
1.解約の予告期間と解約料
ここが分からないと、売却のスケジュールが立ちません。私の場合は6ヶ月でした。半年なのか、3ヶ月なのかで、動き出す時期がまるで変わります。
2.譲渡したときにサブリースがどうなるか
契約上の地位を買主に引き継がせる決まりになっていれば、外して売るには先に解約するしかありません。書式によっては、譲渡後の保証期間そのものが短くなる条項が入っていることもあります。
3.通知の義務
私の契約書には、売却を「検討するとき」に通知する、と書かれていました。売った時ではありません。自分に課されている義務がどこから始まるのかは、先に見ておいたほうがいいと思います。
この3か所は、契約書の後ろのほうにまとまって置かれていることが多い場所です。読むのに専門知識は要りません。私はFP3級を取りましたが、この3つを確かめるのに資格が役立ったという感覚はありませんでした。ただ開いて、探して、読む。それだけのことでした。
まとめ
サブリース付きのワンルームマンションを売った私の記録を、整理します。
- サブリース付きでも売却できる。ただしそのまま売るか、解約してから売るかで話が変わる
- 契約書には、譲渡するならサブリース契約ごと買主に引き継がせると書かれていた。外すには先に解約するしかない
- 解約は申し出から6ヶ月後。売却と同時に走らせないと、買い手を待たせることになる
- 媒介契約の次にやったのが、販売元への解約連絡だった。売却活動より先に解約が来る
- 賃貸中の部屋は中を見ないで値段がつく。用意したのは賃貸借契約書とサブリース契約書の2通だけ
- 買主は2戸とも法人だった。見られていたのは部屋ではなく、そこに付いている数字
解約を拒まれることもある、と聞いていた私が、あっさり解約できたのは運が良かっただけかもしれません。それでも、契約書に書かれた条件を先に確かめておいたことは、無駄になりませんでした。
もし今、サブリース付きのワンルームマンションをお持ちで、このまま続けるか手放すか迷っているなら。まずは、ご自身の部屋が今いくらで売れるのかを知るところからで大丈夫です。決めるのは、その数字を見てからで遅くありません。
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※本記事は、私が実際に締結した契約書と、実際の手続きの記録です。特定の事業者の評価や法的助言を目的とするものではありません。契約条件は契約時期・事業者によって異なります。

