「老後資金は、いくら必要なのか」。
この問いに、私は長いあいだ振り回されてきました。検索すれば「2,000万円」「5,000万円」と数字は出てきます。でも、そのほとんどが夫婦ふたりのモデルケース。50代・独身・賃貸暮らしの私に当てはまる答えは、どこにも見つかりませんでした。
私は新築ワンルームマンション投資で530万円を失った経験のある50代です(この話は別の記事に書きました)。その遠回りの末にFP3級を取り、自分の家計と向き合い直して、ようやくひとつの答えにたどり着きました。
先に結論を言います。私の答えは「いくら」という金額ではなく、「現金6:投資4」という持ち方でした。
この記事では、独身の老後資金の考え方と、私が実際にやっている備え方を、金額の割合まで含めて公開します。
独身の老後資金、みんなどうしてる?
老後資金の情報を調べていて、いちばん困るのがここです。
世の中のシミュレーションは、夫婦前提のものがほとんどです。「夫の年金+妻の年金」「持ち家でローン完済済み」——そんな前提を見るたびに、そっとページを閉じてきました。
独身の老後は、条件がまるで違います。
- 年金はひとり分。足りない分を補ってくれる相手はいません
- 病気やケガで働けなくなったとき、頼れる家計は自分のものだけ
- 賃貸なら、家賃は一生続く固定費になります
だから「みんなどうしてるんだろう」と検索したくなります。その気持ちは、私自身が同じ言葉で何度も調べてきたので、よくわかります。
この記事は、その「みんな」のひとり——50代・独身女性・賃貸暮らしの私の、実際の数字と考え方の記録です。
「独身は5,000万円必要」説を、自分の家計で考えてみた
独身の老後資金について調べると、「5,000万円必要」という説をよく見かけます。
最初に見たときは、目の前が暗くなったのを覚えています。でもFP3級の勉強をしてから見方が変わりました。この手の金額は、「誰かのモデルケース」の答えであって、私の答えではないのです。
必要な老後資金は、突き詰めればこの式で決まります。
(毎月の支出 − 年金などの収入)× 12か月 × 老後の年数
つまり、必要額を決める最大の変数は「毎月いくらで暮らすか」。収入でも運用でもなく、支出です。
私の場合は賃貸なので、ここに家賃が一生分乗ります。年金見込みと家賃をどう突き合わせたかは、別記事で詳しく書きました。
▶ 年金いくらもらえる?50代独身・賃貸派のライフプラン設計
35年の賃貸暮らしで物を増やさず、生活コストを小さく保ってきたことが、ここで効いてきました。支出の小さい暮らしは、それ自体が老後資金です。5,000万円という数字に怯える前に、自分の家計の式に数字を入れてみる。それが第一歩でした。
※本記事は投資助言ではありません。特定の商品やサービスをおすすめするものではなく、私個人の体験と考え方の記録です。投資判断はご自身の責任でお願いします。
私の答え|現金6:投資4で持つ
では、私がどう備えているか。2026年時点の実際の配分を公開します。
| 区分 | 割合 | 中身 |
|---|---|---|
| 守りの資産 | 約6割 | 現金・預金、養老保険(2027年満期) |
| 攻めの資産 | 約4割 | S&P500・オルカンの投資信託、国内高配当株、金、米国債 |
攻めの資産は、いま含み益が約+190万円。国内高配当株からは、年間で約17.5万円の配当を受け取る見込みです(2026年時点)。
「50代で現金6割は守りすぎでは?」と思う方もいるかもしれません。
でも、この6割は計算ではなく、530万円の損失から学んだ「自分が安心して眠れる配分」です。攻めた結果どうなったかは、身をもって知っています。
▶ 【全記録】新築ワンルームマンション投資で530万円損した話 vol.1
新NISAはこう使っています
攻めの4割の中心は、新NISAです。私の使い方はシンプルです。
- つみたて投資枠:eMAXIS Slim S&P500で、毎年満額の120万円を積み立て
- 成長投資枠:オルカン(全世界株)を月3万円+国内高配当株13銘柄をタイミングでスポット購入
2024年の制度開始から続けていて、つみたて投資枠は最短の5年で満額にする計画です。つみたて枠が埋まったら、次は毎月の入金額を増やして、オルカンの積立を成長投資枠に振り向けます。成長投資枠も、できるだけ早く埋める。そんな順番で、淡々と続けていく予定です。
大きく増やすことを狙う投資は、もうしません。インデックスを軸に、配当という「使えるお金」を少し添える。一度大きく損をした私には、この地味さがちょうどいいのです。
金・米国債、そして保険の失敗
攻めの資産には、値動きの違うものを少しだけ混ぜています。
- 金:毎月1万円の積立。株と違う動きをする資産を、機械的に少しずつ
- 米国債:生債券を少額保有。満期まで持てば額面で戻る、という分かりやすさで選びました
一方で、守りの資産の中には「失敗」も混ざっています。養老保険です。
加入のきっかけは、親の遺産を受け取った銀行からの一本の電話でした。「まとまったお金の有効活用を」という提案に、深く考えずに乗ってしまったのです。金融機関の窓口から出てくる「あなたのため」は、向こうの商品棚の中から出てくる——そう気づいたのは、契約したあとでした。
独身の私は、保険に入らないと決めています
FP3級を取ったいまの結論を、先に書きます。私はもう、保険には入りません。
貯蓄型の保険商品の多くは、私の目には「割高な投資」と「薄い保障」をひとつにまとめたものに見えます。増やすなら投資信託のほうが低コストですし、守るなら保障だけを買えば済みます。セットにした瞬間、どちらも中途半端になる——養老保険が、それを教えてくれました。
そして、そもそも独身には保障の出番がほとんどありません。私に万一のことがあっても、収入を失って困る家族がいないからです。
「病気や入院はどうするの?」とよく言われますが、日本の公的制度は思っている以上に頼りになります。
- 高額療養費制度——医療費の自己負担には月ごとの上限があり、超えた分は戻ってきます。幸いまだお世話になったことはありませんが、この上限があるだけで「医療費が青天井になる」という不安は消えます
- 医療費控除——医療費が年間10万円を超えたら、確定申告で所得から差し引けます。こちらは私が毎年使っている制度です。歯の矯正治療などで医療費がかさむ年が続いていて、確定申告のたびに申告しています
制度は知っているだけでも安心材料になります。でも医療費控除のように実際に使ってみると、「保険がなくても何とかなる」という感覚は、確信に変わります。病気や入院は、保険ではなく貯蓄と制度でまかなう。現金を6割持っているのは、このためでもあります。
もちろん、守るべき家族がいる方や、貯蓄がこれからという方には、保険が意味を持つ場面もあると思います。これはあくまで、独身で貯蓄のある私の場合の結論です。
養老保険は中途解約すると元本割れするので、2027年の満期までは持ち続けると決めています。これも、私の授業料のひとつです。
iDeCoを使っていない理由と、いま考えていること
ここまで読んで、「iDeCoは?」と思った方がいるはずです。
正直に書きます。私はiDeCoを使っていません。
節税効果が大きい制度だと、FP3級の勉強で知っています。それでも使っていない理由は、ひとつです。原則60歳まで、引き出せないこと。
50代の独身にとって、この「鍵がかかる」ことの重みは、夫婦世帯とは違います。この先もいまと同じように働き続けられるかどうか、確かなことは言えません。まとまったお金が急に必要になったとき、代わりに出してくれる家計はありません。私にとっては、節税のメリットより、いつでも動かせることの安心が上回った——それが今の判断です。
ただし、結論を出したわけではありません。掛金が全額所得控除になる効果は、働いているあいだは確実に効きます。「困っても触らない金額」を線引きできれば、その範囲で始める選択肢もあります。50代からでも受け取り開始までに積める年数を数えながら、いまも検討を続けています。
もし検討するなら、手数料の安さで選ぶのがFP3級としての基本だと考えています。
まとめ|老後資金は「いくら」より「何で持つか」
独身の老後資金について、私がたどり着いた答えをまとめます。
- 「5,000万円」は誰かのモデルの答え。自分の必要額は、自分の支出からしか出てこない
- 私の持ち方は現金6:投資4。攻めはS&P500を軸に、配当・金・米国債を少し
- iDeCoは「引き出せない重み」と相談中。使わないという判断にも、理由があっていい
金額を追いかけていた頃は、いくら調べても不安が消えませんでした。「何で持つか」を決めてからは、不思議と落ち着いて暮らせています。
530万円を失った私が言うのも変な話ですが、遠回りした分だけ、この配分には根拠があります。誰かの正解ではなく、自分が安心して眠れる持ち方。それが、独身の老後資金のいちばん確かな答えだと、いまは思っています。
自分の「守りと攻めの割合」がどうしても決められない——そんなときは、中立の立場のFPに無料で相談できるサービスもあります。
