住之江2部屋目を引き払って上京したのが2011年12月。そこから14年、私は東京都墨田区立花のアパートで暮らしました。大阪から日帰りで上京した1日のあいだに奇跡的に決まった物件で、選んだのは東武亀戸線「東あずま」駅と「小村井」駅の両方が使える、築4年の木造アパート2階・南向き角部屋。家賃と共益費で月70,800円でした。
この記事は、これから上京を考えている方、東武亀戸線沿線や墨田区の下町エリアでの暮らしに興味がある方、ひとつの部屋に長く住むとどんな出来事が起きるのか知りたい方に向けて、50代の私が立花のアパートで過ごした14年間の暮らしをまとめたものです。
なぜ立花を選んだか|大阪から1日で決めた上京物件探し
上京のきっかけは、住之江2部屋目に住んでいた頃に出会った人物が立ち上げたばかりのベンチャー企業からの誘いでした。「引っ越し費用は全部もつから東京に来てほしい」と言われ、住之江を引き払って上京することになります。
住む場所については、社長から具体的な指定がありました。
「会社は秋葉原だけど、住むのは亀戸にしてほしい。総武線で1本だし、私も近くに住んでいるから何かあった時にすぐ動ける」
東京の地理がほとんど分からない私にとって、亀戸という地名にも特に思い入れはありません。「社長が言うならそこにしよう」と素直に従い、たった1日の日帰り強行スケジュールで物件探しに上京。亀戸駅前の不動産屋に飛び込み、希望条件を伝えました。
- 家賃7万円台まで
- 1Rか1Kで広めの部屋
- 自転車があるから亀戸駅から離れていてもOK
- 築浅希望
「自転車があるから駅から少し離れていてもいい」という条件を伝えたことで、不動産屋さんが紹介してくれたのが墨田区立花のアパート。亀戸駅から自転車で10分ほど、東武亀戸線「東あずま」駅と「小村井」駅の真ん中に位置する築4年の南向き角部屋、家賃+共益費で70,800円でした。その日のうちに内見に向かい、部屋に入った瞬間に「ここでいい」と決定。決め手は天井の高さ・斜め天井に付いた大きな丸形の採光窓・南向き角部屋・独立洗面台/温水便座/浴室乾燥機と、ワンルームとして破格の条件が揃っていたことでした。
たった1日しかなかった物件探しでこれだけの条件が揃った部屋に出会えたのは奇跡だったと、今でも思います。その日のうちに申し込みを済ませて大阪に戻り、12月の引っ越しに向けて準備を始めました。
この部屋の物件詳細|1R・24平米・南向き角部屋
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都墨田区立花 |
| 交通 | 東武亀戸線「東あずま」駅 徒歩4分/「小村井」駅 徒歩4分/JR亀戸駅まで自転車約10分(徒歩約20分) |
| 築年月 | 2007年(入居時で築4年) |
| 建物構造 | 木造2階建てアパート |
| 専有面積 | 24㎡ |
| 間取り | 1R(トイレ・洗面・風呂独立タイプ) |
| 所在階/階数 | 2階/2階建て・南向き角部屋 |
| 設備 | 浴室乾燥機・温水便座・独立洗面台・エアコン・斜め天井の丸形採光窓・水回り窓2つ |
| 入居時の家賃 | 70,800円(家賃+共益費) |
| 居住期間 | 14年(2011年12月〜2025年秋) |
この部屋のもうひとつの特徴は、2階の天井が屋根の傾斜そのまま(斜め天井)になっていて、その斜面に大きな丸形の採光窓があったこと。さらに北側にあるトイレ・風呂・洗面のスペースにも窓が2つ設けられていて、南からの直射日光と北側の水回りからの採光がダブルで入る、ワンルームとしては相当に明るい部屋でした。
建物の構造で少し変わっていたのは、2階の部屋でも玄関は1階にあること。1階の玄関ドアを開けると、すぐ目の前に2階へ上がる階段があり、その階段を上がると専有部分のリビングがあるという2層構造でした。プライバシーが確保されつつ、玄関の靴脱ぎスペースが独立しているので、生活動線としては快適でした。
この「玄関が1階・居室が2階」という構造が、後に思わぬ事件を引き起こすことになります(後述)。
上京初日と立花という街の第一印象
2011年12月、引っ越しトラックで立花のアパートに到着した日のことは今でも覚えています。荷ほどきをしながら、いくつもの「大阪との違い」に気づきました。
まず、関西弁が聞こえない。当たり前の話なのですが、18歳で大阪に出てから20年、生活音の中に常に関西弁があった人間にとって、これはかなり大きな違いでした。コンビニのレジでも、近所の人の世間話でも、聞こえてくるのは標準語ばかり。「東京に来たんだな」と一番実感した瞬間です。
そしてもうひとつ驚いたのが、下町の道の狭さと住宅の密集。立花エリアは戦後の住宅街がそのまま残っているような地域で、車1台がやっと通れる路地に古い木造住宅がびっしりと並んでいます。大阪の住之江あたりの広めの区画に慣れていた目には、街全体がコンパクトでギュッと詰まって見えました。
東武亀戸線という、東京の人もあまり知らない路線
立花のアパートの最寄りは、東武亀戸線「東あずま」駅と「小村井」駅です。亀戸駅と曳舟駅をつなぐ短い支線で、長さわずか3.4キロ。
この路線、東京で長く暮らしている人でも知らないことが珍しくありません。「東武亀戸線?どこそれ?」という反応を、上京してから何度も受けました。さらに驚いたのが、2両編成の電車がトコトコと走っていること。JR大阪環状線や地下鉄御堂筋線の長い編成を見慣れた目には、おもちゃみたいな2両編成が新鮮でした。
でも、これがまた下町らしくて気に入ったのです。混雑とは無縁で、ローカル線のような雰囲気が日常の中にある。東京の真ん中に近い場所で、こんな路線が現役で走っているのが、立花という街の魅力のひとつでした。
よく行った街|亀戸アトレと錦糸町
立花から自転車で10分ほど(徒歩なら約20分)でJR亀戸駅に着きます。帰宅時には亀戸アトレで惣菜や日用品を買い、少し足を伸ばして錦糸町で食事や買い物。都心の便利さと下町の落ち着きが混ざった生活は、立花に住んでいたからこそできた暮らし方でした。
14年住んで気に入っていた点
14年も同じ部屋に住み続けたのは、それだけ気に入っていた要素が多かったからです。住み始めて「いい部屋を選んだな」と感じたポイントを整理しておきます。
- 斜め天井の大きな丸形採光窓+北側水回りの窓2つで、ワンルームなのに圧迫感ゼロ。南からの直射日光と北側からの柔らかい光がダブルで入る、贅沢な採光環境だった。
- 南向き角部屋+前のアパートが2階建てで、日光が遮られない。都心に近い住宅密集地で、ここまで日当たりの良い物件は珍しい。
- 独立洗面台・温水便座・浴室乾燥機が標準装備。当時の家賃帯としてはかなり充実した設備で、毎日の暮らしの快適さに直結した。
- 東あずまと小村井、2駅が徒歩4分で使える。路線は同じ東武亀戸線でも、行きは東あずま・帰りは小村井と使い分けられた。
14年の暮らしで印象に残ったこと
14年住んで今でも鮮明に覚えているエピソードを4つ紹介します。
入居初日にバルコニー軒下のハチの巣事件
引っ越し当日の荷ほどき中、ふとバルコニーに出てみると、軒下に大きなハチの巣がありました。すぐに管理会社に連絡したところ、翌日には駆除業者が駆けつけて処理。費用も借主負担はなく、入居初日のハプニングはあっという間に解決しました。
「東京の物件は対応が早い」と感じた最初の出来事です。住之江の家主さんとは違うタイプの安心感ですが、管理会社経由で動く東京の賃貸システムに最初から好印象を持ちました。
2012年の大雪で玄関ドアが開かなくなった話
上京した翌冬、2012年の大雪に遭遇しました。東京で大雪というだけでも珍しい体験ですが、これまでの生活環境では大雪に遭遇することがめったになかった私にとっては、忘れがたい朝でした。朝起きて窓の外を見ると、街が真っ白になっていました。
問題はそこから先です。物件詳細でも触れたとおり、この部屋は2階に住んでいるけれど玄関は1階。階段を降りて1階の玄関ドアを開けようとしたら——ドアが開かないのです。
外側に積もった雪が、玄関ドアの下にぴったり押し付けられて、ドアが完全にロックされた状態になっていました。力いっぱい押しても数センチしか開かない。やむなく室内側からドアの隙間を少しずつ広げ、出てこれた範囲から手を伸ばして雪をかき分けて、なんとか脱出しました。
大阪では雪に対する備えなんて考えたこともありませんでした。「東京は東京で、大阪にない自然のリスクがある」と知った1日です。
階下の生活音|木造建築の宿命
14年住んで唯一はっきり困ったことがこれです。木造2階建てアパートの宿命として、階下の住人の生活音がよく響いた。テレビ・足音・ドアの開閉音・深夜の話し声まで、すべて床を伝わって聞こえてきました。
気になる時は管理会社に連絡すると、向こうから階下の住人に話を通してくれて、ある程度は改善する。大家さんは一度も顔を見ることなく、すべて管理会社経由で困りごとを処理してもらえる仕組みは、私にとっては合っていました。14年住んだ中で困った点はほぼこの「階下の音」だけで、それ以外は致命的な不満が出てこなかったのも立花のアパートの良さです。
採光窓の二面性|冬は暖か、夏は室内33℃
気に入っていた「斜め天井の丸形採光窓」は、夏になると別の顔を見せました。屋根の斜面に付いた大きな丸窓が夏場の日差しを直接受け止めるため、真夏の夜に帰宅すると室内が33℃になっていることが何度もありました。エアコンを入れても天井近くの熱気がなかなか抜けない、ワンルームの宿命です。
逆に冬は、南向きの日差しがしっかり入って暖かい。採光窓・南向き・角部屋という条件は、夏に厳しく、冬に優しい。これは住んでみないと分からなかったポイントです。
家賃値上げ通知が来た時の話
14年も住んでいると、当然管理会社から家賃値上げの通知も届きます。立花のアパートでも一度値上げの打診が来ましたが、私が選んだのは「合意しません」とはっきり伝えること。借地借家法の規定により、借主が合意しなければ値上げは成立しません。電話できっぱり拒否したところ、その後は値上げ通知が一度も来なくなりました。
値上げを断る具体的な手順や法的根拠、東京の家賃高騰の実態は▶︎ 【50代の実体験】東京の賃貸は本当に高い!14年住んで気づいた家賃高騰の現実と値上げを断る方法 で詳しくまとめています。
それでも退去を決めた理由|目の前に建売3階建ての建設
14年も住んだ部屋を、私はなぜ離れる決断をしたのか。きっかけは「目の前の景色が変わってしまう」という、それまで考えたこともなかった理由でした。
立花のアパートに住んで10年目の頃、バルコニー前の2階建てアパートが取り壊しになりました。長年そこにあった建物がなくなり、私の部屋からは突然視界が開けて、空がよく見える環境になったのです。日当たりも風通しもさらに良くなり、その後の4年間は、立花14年の中でももっとも快適な時期でした。
ところが2025年に入って、取り壊された土地に3階建ての建売住宅を建てる工事が始まりました。3階建てです。今度こそ、私のバルコニー前を完全に塞ぐ高さ。
工事が始まった段階で、「これはもう無理だ」と直感しました。完成すれば、せっかく取り戻した日当たりも視界も、二度と戻ってこない。手狭さや古さも14年住んでいれば気にはなっていましたが、決定打になったのは、「この景色を失うなら、ここに住む意味が薄れる」という気持ちでした。
「もったいない」と「グレードアップ」のあいだで
正直に言うと、退去を決める時はすごくもったいないと感じました。23区内・24平米弱の1Rが14年間70,800円のまま据え置きで住めていた物件は、もう東京では手に入りません。2025年現在の同条件は家賃9万〜10万円台が当たり前なので、出る決断には市場価値で2万〜3万円の損を意識せざるを得ませんでした。
それでも出ようと思えたのは、14年で自分自身も変わったからです。上京した時と比べて手取り収入は約3倍になり、もう24平米の1Rでなくてもいい段階に来ていた。「この機会にグレードアップした部屋に住み替えるのもいいかな」と、自然に思えるようになっていたのです。
余談|上京きっかけのベンチャー企業は3年で倒産していた
最後にひとつ、立花14年の余談を。
そもそも私を東京に呼んでくれた、あのベンチャー企業。「亀戸に住んでほしい」と社長が指定してくれたあの会社は、上京から3年で倒産しました。
つまり、立花のアパートに住んで14年のうち、最初の会社にいたのは3年だけ。残りの11年は、別の仕事をしながらこの部屋で暮らしてきたことになります。「住む場所」と「働く場所」は、思っているよりも独立した存在なのかもしれない、と振り返って感じます。
ベンチャーは消え、自分は14年残り、収入は3倍になり、目の前の景色が変わるタイミングで卒業を決めた——立花のアパートは、私の人生の大きな区切りを刻んだ部屋でした。
私の賃貸遍歴シリーズ|18歳から続く実体験
立花のアパートでの14年は、私の長い賃貸生活の中の「東京編・第1章」です。これまで住んできた物件もシリーズで公開しています。
👉 【50代の賃貸体験談】初めてのひとり暮らしは寮費1万円|18歳でバブル時代に住んだ大阪堺市北花田の1K
👉 【50代の賃貸失敗談】花園町の1階ワンルームに19歳で住んで後悔した10か月の体験
👉 【50代の賃貸体験談】弁天町1Kで家賃を6,500円下げた家賃交渉の実体験|新築プレミアムの罠
👉 【50代の賃貸体験談】住之江2Kに7年|土壁・追い焚き・ゴキブリと配管詰まりで同じマンション内引っ越し
👉 【50代の賃貸体験談】住之江で同じマンション内引っ越し2年|給湯器持参・DIY経験・上京決断のリアル
※シリーズは順次公開予定です。立花14年のあとに住んだ部屋(東京2軒目)の体験談も、近いうちに公開予定です。
東京の家賃事情・値上げを断る方法は▶︎ 【50代の実体験】東京の賃貸は本当に高い!14年住んで気づいた家賃高騰の現実と値上げを断る方法 もあわせてどうぞ。
上京の物件探しが大変だった方へ|家具家電付き・敷金礼金ゼロという選択肢
私は大阪から日帰り1日という強行スケジュールで物件を決めましたが、たまたま条件の合う部屋に出会えただけで、正直リスクの高いやり方でした。遠方からの上京で物件探しに時間がかけられない方や初期費用をできるだけ抑えたい方には、家具家電付き・敷金礼金ゼロ・全国の物件から選べるサービスもあります。初日からそのまま暮らせる状態で入居できるので、引っ越しのたびに家具を揃え直す必要もありません。
まとめ|立花14年で得たもの
- 大阪から日帰り1日の物件探しでも、条件を絞れば奇跡の物件に出会える。「自転車があるから駅から離れていてもOK」という柔軟さが、結果的に良い部屋につながった。
- 木造アパートでも、天井高・採光窓・南向き角部屋・前の建物の高さが揃えば、長期間住みたい部屋になる。物件選びで意外に効くのは「前の建物の高さ」。
- 採光窓は冬は暖か、夏は室内33℃。「明るい部屋」は両刃の剣だと知っておくと、対策しやすい。
- 家賃値上げ通知は借地借家法を根拠に断れる。14年間70,800円のまま住み続けられたのは、この知識があったから。
- 退去のきっかけは思いがけないところからやって来る。立花の場合は「目の前に3階建ての建売建設」が決め手。周辺の将来的な変化も物件選びで考慮しておきたい。
立花のアパートでの14年は、大阪から東京に出てきた30代後半の私が、50代の自分になっていく時間でもありました。次は東京2軒目の話を、これから少しずつシェアしていきます。
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