売却のとき、私の部屋には4つの値段がつきました。
一番高い会社が約3,500万円。一番低い会社が2,700万円。差は800万円です。当時の私は「会社によって、こんなに違うものなのか」と驚くばかりで、なぜ違うのかまでは分かっていませんでした。
売り終えてしばらくして、手元に残った書類の数字で計算し直してみたことがあります。すると、バラバラに見えていた4つの金額が、1本の線の上に並んでいました。
この記事では、投資用ワンルームマンションの値段がどう決まるのかを「収益還元法」という考え方で説明したうえで、実際に自分の部屋の数字を当てはめた結果を、そのままお見せします。
4つの値段は、2,700万円から3,500万円まで割れていた
まず、私の東京23区の物件についた金額を並べます。
- 一括査定で一番高かった会社の査定:約3,500万円
- 実際に売りに出した価格:3,350万円
- 実際に売れた価格:3,000万円
- 購入時の販売会社の査定:2,700万円
一括査定を使ったときの経緯はワンルームマンション査定の体験談に、売り出しから成約までの数字はvol.6 損切りの全記録に、それぞれ書いています。
同じ部屋です。同じ時期です。それなのに、上と下では800万円も開きました。
収益還元法とは|家賃から値段を逆算する考え方
投資用のワンルームマンションは、住むための家とは値段の付き方が違います。
自分が住む家なら「駅から何分か」「日当たりはどうか」といった住み心地が価格に効いてきます。でも投資用の部屋を買う人が見ているのは、そこではありません。その部屋が、毎年いくら稼ぐかです。
そこで使われるのが収益還元法です。考え方はとても単純で、計算式はこうなります。
物件価格 = 年間の純収益 ÷ 還元利回り
年間の純収益というのは、家賃から必要な費用を引いた、手元に残るお金のことです。還元利回りは「この物件になら、これくらいの利回りを求める」という買い手側の物差しだと思ってください。
ここで大事なのは、還元利回りは物件ごとに違うということです。安心して持てる物件なら低い利回りで納得しますし、何かリスクがあると感じれば高い利回りを要求します。そして式を見れば分かるとおり、要求される利回りが高くなるほど、価格は下がります。
ちなみに、区分のワンルームマンションは土地の持ち分がとても小さいので、土地と建物の価値を積み上げる方法ではほとんど値段が出ません。だから、この収益還元法が価格の中心になります。
自分の部屋の「純収益」を出してみる
では、私の部屋の数字を入れてみます。使うのは、決済のときの精算書に書かれていた実額です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃(月) | 122,000円 |
| 管理費・修繕積立金(月) | −9,825円 |
| 差引(月) | 112,175円 |
| 年間の純収益 | 1,346,100円 |
112,175円 × 12か月で、年に1,346,100円。これがこの部屋の稼ぐ力です。
ひとつお断りしておきます。これは固定資産税や賃貸管理の手数料を引いていない、簡易的な計算です。実務ではもっと細かく費用を引きますので、ここから先の数字も「だいたいこのあたり」として読んでください。
4つの金額を、還元利回りに置き換えてみた
さきほどの式を逆から使います。純収益1,346,100円を、それぞれの価格で割ると、その金額が何%の利回りに相当するかが出ます。
| 実際についた金額 | 逆算した還元利回り |
|---|---|
| 3,500万円(一括査定の最高額) | 3.85% |
| 3,350万円(売り出し価格) | 4.02% |
| 3,000万円(実際に売れた価格) | 4.49% |
| 2,700万円(販売会社の査定) | 4.99% |
はじめてこの表を作ったとき、私はしばらく画面を見つめていました。
バラバラに見えた査定額は、1.1ポイントの中にあった
800万円という差は、金額で見るととても大きく感じます。私も当時はそう思っていました。
でも利回りに置き換えると、一番高い3.85%と、一番低い4.99%の差は、1.1ポイントしかありません。
4社が言っていたのは、まったく違うことではなかったのです。「この部屋には4%くらいの利回りを求める」「いや、5%は欲しい」。その程度の差でした。それが金額に直った瞬間、800万円という顔になって私の前に現れた。
つまり、査定額が割れるのは、担当者の気分でも当てずっぽうでもなく、その会社がこの部屋にどれだけのリスクを見たかの差なのだと思います。あのとき私は「会社によって違うものなんだな」で受け止めを終えていました。数字の意味を知っていれば、担当者にもう一歩踏み込んで聞けたはずです。
販売会社の2,700万円が、ちょうど5.0%だった理由
4つの中で一番低かったのは、私にこの部屋を売った会社が出した2,700万円でした。逆算すると4.99%。ほぼきっかり5.0%です。
なぜここだけ利回りを高く見たのか。あくまで私の推測ですが、サブリース契約が付いたままの前提で値づけしたからではないかと思っています。
サブリースが付いている部屋は、買った人がすぐには自由に使えません。家賃の見直しを求められる可能性もあります。買い手にとって不自由な物件は、その分だけリスクが高い。リスクが高ければ、求める利回りは上がる。上がれば、価格は下がる。式のとおりです。
このサブリースをどうやって外して売ったのかは、サブリース付きのワンルームマンションは売却できない?に書きました。結果として私は解約してから売り、3,000万円で成約しています。
推測が当たっているかは分かりません。ただ、数字の並び方だけを見れば、そう読めるというだけの話です。
横浜の部屋では、同じ計算ができなかった
この計算は、2戸のうち東京23区の部屋でしかできませんでした。
横浜の部屋は、家賃が85,000円でした。ただしこれは、賃料73,000円と共益費12,000円を足した数字です。共益費を収益に入れるかどうかで、純収益が年に14万円以上変わります。そうすると逆算した利回りも変わってしまい、「こう並んだ」と言い切れる形になりませんでした。
だからこの記事では、数字が確定できる1戸だけを扱っています。きれいに並ばなかったほうを黙って落とすのは違うと思ったので、書き添えておきます。
まとめ
売却のときに知っておきたかったことを、3つにまとめます。
- 投資用ワンルームマンションの値段は、家賃から逆算して決まる。純収益 ÷ 還元利回り。住み心地ではなく、稼ぐ力で値段がつく
- 査定額が会社ごとに割れるのは、求める利回りが違うから。私の場合、800万円の差は利回り1.1ポイントぶんだった
- サブリースが付いたままだと、リスクの分だけ利回りを高く見られる。価格が下がる方向に働く
査定額を見て「高い」「安い」と一喜一憂していた当時の私に、この計算式を1つ教えてあげたかったと思います。金額そのものより、その金額が何%として見られているのか。そこが分かれば、担当者に聞くべきことも変わっていたはずです。
同じようにワンルームマンションの出口で迷っている方が、数字の裏側を少しでもつかめたなら、書いた甲斐があります。
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