5,450万円のローンを手放した日|ワンルームマンション投資を損切りした全記録【FP3級・vol.6】

「5,450万円のローンを手放した日」と記した、ワンルームマンション投資失敗シリーズvol.6のアイキャッチ。新築ワンルームマンション投資を4年で損切りした元オーナー・FP3級の売却体験記。 ワンルーム投資の失敗記録
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2020年に買った2つの新築ワンルームマンション。私はこれを、2024年にすべて手放しました。

「節税になる」「資産になる」と言われて背負った、合計約5,450万円のローン。その重荷を下ろすまでに、私が何を考え、どう動いたのか。

考えてみれば、おかしな話です。自分自身は賃貸暮らしを続けながら、他人に貸すためのワンルームマンションだけを2つ、数千万円の借金で抱えていたのですから。

このvol.6は、シリーズの「損切り」編です。売ると決めた日から、2件を売り切って引き渡すまでの全プロセスを、FP3級・元オーナーとして正直に記録します。

※このシリーズを初めて読む方は、失敗の全体像を書いたvol.1から読むと流れがつかめます。

「売らない」が「売る」に変わった日

しばらくの間は「売らずに持ち続ける」つもりでした。いつか相場が上がったときに売れば、利益(キャピタルゲイン)が出る――業者のその言葉を、私はすっかり信じ込んでいたからです。

毎月の赤字も、「値上がりするまでの辛抱だ」「それに節税にもなっている」と自分に言い聞かせていました(節税の実態はvol.5に書いたとおりでした)。

それに、損切りには「ここまで払ってきたのに」という気持ちがどうしてもつきまといます。手付金を払い、毎月のローンを返し続けてきた。ここで売れば、その努力が「失敗」として確定してしまう。その確定が、こわかったのです。

気持ちが変わったきっかけは、ある一本の動画でした。

不動産投資の実態を扱うYouTubeチャンネルで、新築ワンルームマンション投資の「出口(売却)」がいかに厳しいかを知ったのです。新築で買った物件は値下がりが大きく、売ろうにも売れない人が大勢いる――。画面の中の話が、そのまま自分のことに思えて、背筋が冷えました。「私の物件も、まったく同じ構造なのではないか」と。

決定打になったのは、この先の負担はむしろ増えていくと気づいたことでした。今でも毎月赤字なのに、持ち続けるほど状況が悪くなる材料ばかりだったのです。先のキャッシュフローが沈んでいくのが、はっきりと目に見えました。

  • 金利は、借りた直後から少しずつ上がっていた(vol.3参照)
  • 5年目には管理費・修繕積立金がアップする
  • サブリースの保証賃料も、数年ごとに見直される

どの要素をとっても、未来は今より悪くなる方向にしか進みません。「持ち続ければいつか報われる」という根拠は、どこにもありませんでした。

ひとつ、迷いもありました。税金です。

売却について調べるうちに、売るタイミングで税率が大きく変わることも、自分で知りました(当時はまだ、FP3級の資格は持っていませんでした)。買って5年以内に売ると「短期譲渡」で税率は約40%。5年を超えてから売れば「長期譲渡」で約20%。同じ利益でも、税金がほぼ倍も違うのです。

あと1年だけ待てば、税金は軽くなる。頭では分かっていました。

それでも、私は待ちませんでした。「これ以上持っていても、傷が広がるだけ」。とにかく一刻も早く、この重荷から身軽になりたかった。税率の損得を分かったうえで、それでも早く売ると決めたのです。

衝動ではありません。数字を見て、未来を計算して、それでも「今すぐ降りる」と決めた。これが、私の損切りの始まりでした。

まず一括査定で「今の本当の価値」を知る

売ると決めても、自分の物件がいくらで売れるのかは、まったく見当がつきませんでした。

買ったときの価格は覚えています。でも、不動産は「買った値段」では売れません。「今、市場でいくらの値がつくか」がすべてです。そして当時の私は、その相場をまるで知りませんでした。

そこで使ったのが、不動産の一括査定でした。一度の手続きで、複数の不動産会社にまとめて査定を依頼できます。

一度の申し込みで、複数の会社の査定をまとめて受けられるのは、思った以上に便利でした。

こうして相場感がつかめたと同時に、厳しい現実も突きつけられました。新築で買ったときの値段から、どれだけ値下がりしているかが、各社の数字でくっきり見えたのです(新築プレミアムの正体はvol.3に書いたとおりでした)。

ちなみに、購入時の販売会社にも査定をお願いしてみました。ところが、相見積もりの中で、その金額がいちばん安かったのです。中野富士見町は、たしか2,700万円ほどと言われたと記憶しています。

おそらく、借り上げ(サブリース)が付いたままの前提で値づけしたのでしょう。借り上げが残っている物件は、買い手にとって自由が利かず、その分だけ低く見積もられがちです。買ったときの会社が、いちばん高く売ってくれるとは限らない――これも、何社かに当たってみて初めて分かったことでした。

ショックではありました。でも、現実の数字を直視できたことが、その後の判断をぶれさせませんでした。

売却で動くお金は数千万円単位です。最初に複数社の査定で相場を知っておくこと。これは、損切りを少しでも有利に進めるための、いちばん大事な一歩でした。一社だけの言葉を信じて買って失敗した私は、出口では「複数の目」で確かめようと決めていたのです。

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売却を任せる会社を決める

査定を出してくれた会社の中から、いちばん信頼できそうだと感じた一社に売却をお願いすることにしました。2024年2月のことです。

結んだのは「専属専任媒介契約」。一社にしっかり任せる代わりに、その会社が責任を持って買い手を探してくれる契約です。担当者は「3月までに必ず売れるよう頑張ります」と、はっきり言ってくれました。

その一言が、当時の私にはとてもありがたかった。売れるかどうか分からない不安の中で、「期限を切って動いてくれる人がいる」というだけで、気持ちがずいぶん軽くなったのを覚えています。

ここで一つ、大事なことがあります。実際に売却を任せたのは、買ったときの販売会社とは別の会社だったという点です。

査定こそ購入時の会社にもお願いしてみました(先ほど書いたとおり、いちばん安い金額でしたが)。それでも、売却そのものを託す相手は、利害の違う別の専門家にしようと決めていました。

買うときと売るときでは、立場も利害も違います。買わせる側の言葉を鵜呑みにして失敗した以上、せめて出口くらいは、自分で選んだ相手に任せたい。これは、自分なりのけじめでもありました。

2件を売り切るまで

売却の前に、もう一つやることがありました。サブリースの解約です。

借り上げ契約が付いたままだと売りにくいため、先に解約手続きを進めました(このサブリースが実は「二重構造」だったという衝撃の話はvol.4に書きました)。解約には6か月前の通知と、保証賃料1か月分の違約金が必要でした。

そこからの流れは、こう進みました。

  • 買い手が決まり、2024年3月15日に2件とも売買契約を締結
  • そのあと残金の決済・引き渡しへ。2件まとめて、2024年6月に決済しました

売りに出してから決済まで、一社に任せて数か月ほど。2件をまとめて手放せたときには、ようやく長いトンネルを抜けたような気持ちでした。

売却価格を、買ったときの価格と並べると、値下がりの大きさが一目で分かります。

物件購入価格売却価格差額
中野富士見町3,350万円3,000万円−350万円
新横浜2,180万円2,150万円−30万円
2件合計5,530万円5,150万円−380万円

新築で買ってから、わずか4年。2件合わせて約380万円も値下がりしていました。

決済まわりで意外だったのは、司法書士とは一度も顔を合わせず、手続きが電話だけで進んだことです。本人確認も、かかってきた電話で済みました。

そして決済の日、買主からの売却代金は、私の手元に入ることなく、そっくりそのままローンの一括返済に充てられました。手元にお金が残るどころではありません。売却の時点で、ローンは中野富士見町に約3,040万円、新横浜に約2,040万円も残っていたのです。

さらに、売るためにも、仲介手数料や繰上返済手数料、抵当権の抹消費用など、まとまった費用がかかりました。「売る」という行為にも、これだけのお金が必要になるのです。買うときには、誰一人として教えてくれなかったことでした。

(これらの売却費用の細かい内訳は、別の記事であらためてまとめる予定です。)

5,450万円の重荷を下ろして

物件価格の値下がり(先ほどの−380万円)とは別に、売却の決済そのものでも、現金が動きました。残っていたローンの返済に、仲介手数料やさまざまな精算費用が加わった、最終的な収支です。

  • 中野富士見町:売却代金だけではローンを完済できず(オーバーローン)、そこに仲介手数料などの費用も重なって、最終的な持ち出しは約175万円
  • 新横浜:こちらは諸費用を差し引いても、約46万円のプラス(余り)になりました

この2件を相殺し、最終的に約129万円を自分で振り込みました(このほかに、抵当権を抹消する費用も別途かかっています)。

2件を手放すために、最後にもう一度、約130万円近い現金が出ていったのです。「売れば楽になる」と思っていたのに――。この出費も、買うときにはまったく想像していませんでした。

それでも、私にとっては、お金よりも気持ちの方がずっと大きかった。毎月の赤字と、約5,450万円の借金。その両方から、ようやく解放されたのです。

しかも、5年目の管理費アップの直前で売り抜けることができました。あのまま持っていたら、負担はさらに増え、売れる金額はもっと下がっていたはずです。結果的に、このタイミングは正解だったと思っています。

この決済での持ち出しも、損失のひとつのピースにすぎません。物件価格の値下がり・4年間の毎月の赤字・買ったときの諸費用――そのすべてを合算した損失が、このシリーズで何度も触れてきた「約530万円」です(損失の全体像はvol.1、節税効果との対比はvol.5に書きました)。

530万円といえば、新車の乗用車が一台、現金で買えてしまうほどの金額です。4年間で、それだけのお金が静かに消えていきました。

それでも、決済をすべて終えたあの日――久しぶりに、肩の荷が下りた気がしました。「これでもう、毎月の赤字に怯えなくていい」。その安堵が、損失額の重さを少しだけ軽くしてくれました。

ふと思ったのは、自分自身はずっと賃貸暮らしのままだったということです。他人に貸すための部屋を2つも、5,450万円の借金で抱えていたのに、自分が住んでいたのは普通の賃貸アパート。売り切ってようやく、自分の「身の丈」がどこにあったのかが見えた気がしました。背伸びをしていたのは、ほかでもない自分自身だったのです。

売って終わり、ではなかった

ところが――売って、それで終わりではありませんでした。

実は、売ったあとにもう一つ、待っていたものがあります。税金です。

売却の翌年、確定申告のことで税理士に相談したとき、私は「減価償却費」というしくみを、そこで初めてきちんと理解しました。

節税になると思って毎年計上していたあの減価償却が、売るときの税金に関わってくる――そのことを、当時はまったく知らなかったのです。これには、本当に驚きました。

その顛末は、次回 vol.7「売って初めて分かった、税金の答え合わせ」で詳しく書きます。「節税のはずが、なぜ売却時に税金の話が出てくるのか」――これが、ワンルームマンション投資の最後の落とし穴でした。

まとめ|FP3級が損切りに思うこと

損切りは、こわいものです。「ここまで払ったのに」という気持ちが、決断を何度も鈍らせます。

でも、持ち続けるほど傷が深くなると分かったときには、思い切って早く決断したほうがいい場合もあります。私の場合、税率の不利を承知のうえで早く売ったことに、後悔はありません。傷が浅いうちに降りられたのですから。

世の中には「損切りできない人」がたくさんいます。私も、はじめは手放す気などありませんでした。それでも踏み切れたのは、冷静に先を見たとき、この投資が好転する材料がひとつも見当たらなかったからです。持ち続ければ、損は静かに膨らんでいくだけ。たとえ自腹を切ることになっても、いま手放すほうが痛みは小さくて済む――そう見通せたとき、迷いは消えました。すでに払ったお金は、もう戻りません。ならば、これ以上失わない道を選ぶ。考えたのは、それだけでした。

いちばんの教訓は、これに尽きます。買う前に「出口」を計算すること。 いくらで売れて、いくら税金がかかり、手元にいくら残るのか。私はそれをまったくしないまま、勢いで買ってしまいました。

もし今、同じように物件を持っていて悩んでいる方がいるなら――まずは今いくらで売れるのかを知ることをおすすめします。私自身は、いくらか自腹を切ってでも一日も早く手放そうと心を決めたうえでの査定でしたが、売るか持ち続けるかを迷っている段階なら、いまの価値を知ることが、判断の確かな材料になるはずです。

次回 [vol.7] では、売却の最後に待っていた「税金の答え合わせ」を記録します。最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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