投資用に買った新築ワンルームマンションを2件、売り切って。翌年の確定申告(vol.7)の「答え合わせ」も終えて。これでようやく、この投資から完全に解放された——そう思っていました。
ところが今年、私はまた税務署に、一枚の届出を出すことになりました。「消費税課税事業者届出書」。物件はもう、一件も持っていないのに、です。
マンションや不動産を売ると、消費税はかかるのか。——ふだん暮らしていると、あまり意識しないところだと思います。私も、家賃に消費税がかからないことは知っていても、「売る」ときのことは、まるで考えていませんでした。
今回は、シリーズでも予告していた「消費税」という、最後の最後まで残っていた落とし穴を、FP3級・元オーナーとして、ありのままに記録します。同じ立場になりうる個人の方の、参考になればうれしいです。
※はじめての方は、失敗の全体像を書いた vol.1 から読むと流れがつかめます。
マンション・不動産を売ると、消費税はかかるのか?(まず結論)
細かい実話に入る前に、いちばん知りたいところを先にお伝えします。
まず、自分が住んでいた家(マイホーム)を売る場合は、基本的に消費税はかかりません。個人が生活のために持っていた住まいを手放すのは「事業」ではないからです。多くの方は、こちらに当てはまると思います。
ところが、投資用のマンションなど、賃貸に出していた物件を売る場合は、話が変わります。このとき、売った個人は消費税のうえでは「事業者」とみなされ、建物部分の売却額が消費税の課税対象になることがあるのです。(土地の部分は非課税ですが、建物の部分は課税されます。)
不思議なのは、同じ物件でも「家賃」は非課税だということ。住宅の家賃に、消費税はかかりません。貸している間は非課税、売った瞬間に課税。この切り替わりが、いちばんの盲点です。
では、その消費税は誰が、いつ納めるのか。納めるのは、売った事業者本人です。ただし、売った年に「免税事業者」だった場合は、その売却で、ただちに消費税を納めるわけではありません。——ここに、私がはまってしまった「時間差」の落とし穴がありました。順番に書いていきます。
売って、確定申告も済んで、終わったはずだった
vol.7では、売却の翌年にやってきた確定申告——減価償却の「答え合わせ」の話を書きました。2件の譲渡損益がたまたま相殺され、譲渡所得への課税は実質ゼロで着地。長かった失敗も、これで本当に終わり。そう感じていました。
でも、終わっていませんでした。
きっかけは、一本の連絡でした。もともと私にこの投資を紹介してくれた、当時の上司。その人から、思いがけないことを言われたのです。
「マンションを売ったから、消費税の課税事業者になるよ」
何を言われているのか、すぐには分かりませんでした。消費税? 私が? 物件はもう、とっくに手放したのに?
半信半疑のまま、確定申告をお願いしていた税理士にも確認してみました。すると——上司の言うとおりでした。「売った建物の金額が大きいので、課税事業者になりますね」と。
頭の中が、また真っ白になりました。上司の話に乗って始めた投資で、最後は130万円近くを自腹で持ち出して、ようやく手放したばかり。それなのに、どうして今さら、消費税の事業者にまでならなければいけないのか。理不尽としか言いようのない気持ちで、胸がいっぱいになりました。
「課税売上1,000万円」のライン——2件売って超えた
消費税には、「課税売上高が1,000万円を超えると、納税の義務が出てくる」というラインがあります。
ふだんの私は、家賃収入が非課税ですから、このラインとは一生無縁のはずでした。ところが2024年、私は中野富士見町と新横浜の2件を、立て続けに売却しました。この2件の建物部分の売却額を合わせると、1,000万円のラインを、ゆうに超えてしまったのです。
売った年だけ、いきなり「課税売上1,000万円超」の人になってしまった。狙ったわけでも、儲けたわけでも、何でもありません。ただ、これ以上損を膨らませたくない一心で、損切りのために手放しただけ。
それなのに、数字の上では立派な「1,000万円を売り上げた事業者」に見えてしまう。実際には赤字で手放したのに、です。おかしな話に聞こえるかもしれませんが、これが消費税の仕組みなのだと、あとで知りました。
物件を手放して2年後、「課税事業者」になった(今年)
そして、ここがいちばん腑に落ちなかったところです。
売却した2024年(令和6年)の時点では、私はまだ「免税事業者」でした。だから、2024年の売却そのものに消費税を納めたわけではありません。ここは、少しほっとする話です。
問題は、その先でした。2024年の課税売上が1,000万円を超えたことが「判定の基準」になり、その2年後——令和8年、つまり今年は、私が消費税の「課税事業者」になる。そういう仕組みだったのです。免税事業者から課税事業者へ、時間差で切り替わったわけです。
今年、私は所轄の税務署で「消費税課税事業者届出書」を提出しました。手元にある届出書には、はっきりとこう書かれています。適用が始まるのは、令和8年1月1日から、と。
物件はもう、一件も持っていません。売って、手を離れて、すっかり終わったはずでした。それなのに、その売却が引き金になって、今年は消費税の課税事業者になったのです。
「売って終わり」では、まったくなかったのです。すでに手放したはずの2件が、2年越しに、思いもよらない形で、私のもとへ返ってきました。
では、消費税はいくら納める?(本則・簡易・2割特例/まだ進行中)
では、課税事業者になって、実際にいくら消費税を納めるのか。
ここは、まだ何も決まっていません。
課税事業者になると、その年の「課税売上」に応じて消費税を申告・納税することになります。ただ、私の場合、売った物件からの収入は、もうありません。いま会社員の給与のほかに得ているのは、メディアに少し出演したときの、ごくわずかな謝礼くらい。それを「事業の収入」として扱うのかどうかも、まだ決めかねています。
これから、このブログのような活動で収益が生まれれば、そのぶんが消費税の対象になっていくのだと思います。納税額の計算のしかたにもいくつかのやり方があるようで、自分にどれが合うのかは、これから税理士の力も借りながら見極めていくつもりです。
ただ、自分で調べていて、ひとつはっきり分かったことがあります。よく耳にする「2割特例」——納める消費税を売上の2割で済ませられるという負担軽減の仕組み——は、私のケースでは使えない、ということでした。2割特例は「インボイス登録をきっかけに課税事業者になった人」向けの制度で、私のように売却で課税売上が1,000万円を超えて課税事業者になった場合は、対象外なのだそうです。同じ言葉でも、自分に当てはまるかどうかはまるで違う。ここでも、思い込みは危ないと感じました。
あの上司からの一報がなければ、私はFP3級の勉強で税金を学ぶまで、この仕組みの存在すら知らないままでした。知らないというのは、それだけで怖いことなのだと、あらためて思い知りました。
そして、考えるうちに、あることに思い当たりました。もし私が会社員ではなく、専業のフリーランスだったら——。収入のすべてが事業の売上として消費税の対象になり、その負担は、いまの比ではなかったはずです。たまたま給与という土台があったから、まだこの程度で済んでいる。そう気づいて、ぞっとしました。
つまり、この話は、まだ「現在進行形」です。きれいに解決した過去の思い出話ではなく、私がいままさに向き合っている最中の出来事として、記録しておきます。
まとめ|入口の「節税」の裏で、出口には税金がいくつも待っていた
vol.7では、減価償却の「節税」が、売却のときに譲渡所得税として跳ね返ってきた話を書きました。そして今回の、消費税。——出口には、いくつもの税金が、順番待ちのように控えていたのです。
業者は、買わせるときに「節税になります」とは、熱心に言いました。でも、売ったあとに何が起きるのかは、ただの一度も説明してくれませんでした。譲渡所得税のことも、消費税のことも、全部、自分が当事者になってから初めて知ったのです。
そもそも、入口で言われた「節税」は本当に得だったのか。確定申告5年分の還付額をぜんぶ並べて検証した話は、「不動産投資は節税」は嘘?確定申告5年分の還付額で検証にまとめています。あわせて読んでいただけたらと思います。
もし今、新築ワンルームマンション投資を勧められている個人の方がいるなら、頭の片隅に置いておいてほしいことがあります。投資用の物件を売るときには、譲渡所得税だけでなく、消費税まで絡んでくることがある。「売れば終わり」ではないのだ、と。
私自身、まだこの宿題の途中にいます。次にどうなったのかも、分かった時点で、書き足していくつもりです。落とし穴は、本当に、最後の最後まで尽きませんでした。
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