新築ワンルームマンション投資に失敗し、4年で約530万円を失った私は、2024年、ついに2つの物件を手放す決断をしました。投資失敗シリーズ本編では、その損切りの全体像をお伝えしてきました。
ただ、いざ「売る」と決めても、私は不動産の売却なんてやったことがありません。何から手をつければいいのか、まるで見当がつきませんでした。そんな私が最初に頼ったのが、不動産の一括査定サービス「イエウール」でした。
結論から言うと、同じ部屋なのに、査定額には最大で800万円の差がつきました。そして一番低い金額を出してきたのは、意外な相手でした。
この番外編では、一括査定を入り口にして、どうやって損切りの売却までたどり着けたのか。査定額の幅、営業電話の実態、業者選びの決め手まで、実際に体験して分かったことを、FP3級・元オーナーとしてお伝えします。
「売る」と決めたものの、途方に暮れていた
損切りを決めたときの私は、正直なところ、ほっとした気持ちよりも不安のほうがずっと大きかったように思います。毎月の赤字を垂れ流すこの状態から抜け出したい。その一心で「売る」とまでは決めたものの、では具体的に何をどうすればいいのか、まったく分からなかったのです。
不動産を売るなんて、人生で一度も経験がありません。どこに相談すればいいのか、誰に頼めば安心なのか、そもそも自分の物件が今いくらで売れるのか。何ひとつ見当がつかないまま、ただ時間だけが過ぎていきました。
買うときはあれほど熱心に近づいてきた業者も、こちらが「売りたい」となった途端、どこへ連絡すればいいのかさえ分かりません。買うのは一瞬、売るのは手探り。それが、当時の正直な実感でした。
ちなみに、最初から「2戸とも売る」と決めていたわけではありません。当初は状況の厳しい1戸だけを手放して、もう1戸は残債を減らしながら持ち続けるつもりでした。それが、出口を調べるほどに「2戸とも手放して身軽になるほうが、私の人生には合っている」と考えが変わっていったのです。
最初の失敗:よく調べずに「AI査定」に登録したら、毎日営業メールが届いた
実は、イエウールにたどり着く前に、ひとつ失敗をしています。
「まずは気軽に相場だけ知りたい」と思った私は、検索で見つけたAI査定のサイトに、深く考えずに登録しました。すると翌日から、営業メールが毎日届くようになったのです。「売却の必須知識・第1回」「近隣の新着売却事例」……朝と晩、多い日は1日に2通。しかも運営会社は、私の物件がある東京・横浜から遠く離れた地方の不動産会社でした。
メール自体は悪質なものではありません。ただ、「査定を申し込む」ということは「売却見込み客リストに載る」ということなのだと、このとき身をもって知りました。
だからこそ、次に使うサービスは「どこの会社から連絡が来るのか」がはっきりしている仕組みを選ぼうと決めました。査定は、どこに頼むかを決めるところから始まっているのです。
なぜ「一括査定」から始めたのか
そんな私が一括査定にたどり着いた理由は、はっきりしています。一社だけの言葉を、もう信じたくなかったからです。
そもそも私が新築ワンルームマンションを買ってしまったのは、一人の営業担当の「節税になります」「年金代わりになります」という言葉を、そのまま受け取ってしまったからでした。たった一つの窓口の話を鵜呑みにした結果が、4年で約530万円の損失です。
だから、出口だけは同じ失敗を繰り返したくありませんでした。「今、この物件は本当はいくらで売れるのか」を、複数の会社の目で確かめたい。そのために一番手っ取り早かったのが、一度の申し込みで複数社にまとめて査定を頼めるイエウールの一括査定でした。
イエウールの申し込みは、驚くほど簡単だった
身構えていた私は、申し込みのあまりの簡単さに拍子抜けしました。物件の住所や広さ、間取りといった基本情報を一度入力すれば、こちらの手を動かす作業はそれで終わりです。
あとは、その物件を扱いたいという不動産会社のほうから、私あてに連絡が届きました。私の場合、連絡をくれたのは5〜6社。自分で一社ずつ会社を調べ、同じ情報を何度も打ち込んで回る――その手間がまるごと省けるのが、一括査定のありがたいところです。
査定は、部屋を見てもらう訪問査定ではなく、書類と市場データで見積もる机上査定でお願いしました。投資用で入居者がいる部屋は、そもそも中を見せられないので、机上査定が基本になります。このとき手元に用意したのは、賃貸借契約書とサブリース契約書の2つ。多くの会社は、まずサブリース契約の中身やローンの残債といった状況をていねいに確認したうえで、概算の価格を出してきます。オーナーチェンジ物件は「家賃がいくらで、どんな契約が付いているか」で値段が決まるので、この2つの書類は査定の精度に直結します。
一度の入力で、いくつもの会社の見立てが集まってくる。あれほど途方に暮れていたのに、動き出してみれば、思っていたよりずっとスムーズでした。何から始めればいいのか分からなかった私にとって、この「最初の一歩」を用意してくれたことが、何よりありがたかったのです。
査定額は2,700万円〜3,500万円。同じ部屋で800万円の差がついた
一括査定の一番の値打ちは、ここにあったと思います。複数の会社の見立てを、一度に並べて比べられることです。
東京23区の物件に出てきた査定額は、一番高い会社で約3,500万円。一番低い会社は2,700万円でした。同じ部屋なのに、差は800万円です。
もし一社にしか相談していなかったら、私はその会社が出した金額を「こんなものか」と受け入れていたはずです。高いのか安いのか、比べる相手がいないのですから。買うときに一社の言葉だけを信じて失敗した私が、同じ過ちを出口でも繰り返していたかもしれません。
そして、一番低い2,700万円を出してきたのは、どこだったと思いますか。イエウール経由の会社ではなく、私に物件を売った販売元の会社でした。念のためにと思って別途査定を頼んだ結果がこれです。
あくまで私の推測ですが、この金額は「サブリース契約を外さないまま売る」前提の査定だったのではないかと思っています。サブリース付きの物件は買い手が限られ、価格が下がるのが一般的だからです。理由はどうあれ、もしこの1社だけに任せていたら、私は最終的な売却価格より数百万円低い金額で手放していたかもしれません。
数字が見えてくると、不思議と気持ちが落ち着いてきました。漠然とした不安の正体は、たいてい「分からないこと」です。今いくらで売れそうかという現実の数字を手にしただけで、私は次の一歩を、自分の判断で踏み出せるようになりました。
「そっちの物件はいらない」――2戸セット販売を断られた話
もうひとつ、査定を通じて思い知らされたことがあります。同じ「ワンルームマンション」でも、業界の食いつきがまるで違うことです。
私の物件は、東京23区内と横浜市内の2戸。どうせならと2戸セットでの売却を希望したのですが、返ってきた反応のほとんどは「横浜のほうはいらない」でした。査定の段階から、各社の関心は明らかに23区の物件に集中していて、売却の話も23区のほうが先行して進んでいきました。
業界はやはり「東京23区」というブランドに魅力を感じるのだな、と肌で感じた瞬間でした。結局セット販売はあきらめて、1戸ずつ売ることになりました。
ところが、です。皮肉なことに、最終的な収支でプラスで着地したのは、誰にも興味を持ってもらえなかった横浜の物件のほうでした。人気の23区の物件は、残債との関係で持ち出しになりました。「人気がある物件」と「自分の収支が合う物件」は、まったくの別物なのです。この顛末の数字は、本編vol.6に詳しく書いています。
営業電話・メールのリアル:ほとんどは丁寧、でも例外もいた
一括査定というと「営業電話の嵐になるのでは」と心配する方も多いと思います。実際のところをお伝えします。
私の場合、イエウール経由で連絡をくれたのは5〜6社。やり取りのほとんどは丁寧な対応でした。電話やメールで状況を確認し、こちらが返事をすれば引き下がる。身構えていたほどの「嵐」ではありませんでした。
ただし、売却活動の全体を通じて、例外が1社だけありました。私が別の会社と専属専任媒介契約を結んだ後になっても、何度も何度も電話をかけてきた会社です。「もう媒介契約を結びました」と伝えても、です。当時の私は一括査定のほかにAI査定サイトや販売元にも査定を出していて、いろいろな窓口から連絡が来ていたので、正直なところ、この会社がどこ経由だったのかは覚えていません。ただ、査定をどこかに頼めば、こういう会社に当たる可能性はゼロではない。それが実感です。
対処としては、契約先を決めた時点で他社にはっきりそれを伝えること、それでも続く電話には出ないこと。これに尽きます。査定を頼んだ以上、各社が営業をかけてくるのは仕事として当然のこと。だからこそ、こちらも「決めたら断る」をはっきりやる必要があります。
信頼できる会社に任せて、売却できた
見積もりを比べていくなかで、「この会社になら任せられそう」と感じた一社に、売却をお願いすることにしました。2024年のことです。
決め手は、金額の高さだけではありませんでした。ひとつは、担当者の熱意です。こちらの事情をどれだけ親身に聞いてくれるか、無理のない筋道を示してくれるか。数千万円のやり取りを託す相手として、その「人」の部分を、私は複数の会社を見比べたうえで選びました。
もうひとつ、偶然の後押しもありました。その会社は、過去に私の横浜の物件と同じマンションの売却を手がけたことがあったのです。そのときの査定額と実際に売れた価格がほとんど変わらなかったと聞いて、「この会社の見立ては現実とずれていない」と感じられたことが、最後のひと押しになりました。
そこからは、その会社が買い手を探してくれて、最終的に無事に売却まで進めることができました。
決済は、海外から帰国した翌日だった
最後に、少しだけ余談を。2戸の決済(引き渡しとお金の精算)は、2024年6月末に、まとめて同じ日に行われました。実はその日は、私が海外から帰国した翌日でした。
売却なんて考えてもいなかった時期に、すでに6月の渡航チケットを買ってしまっていて、売却のスケジュールと真正面からぶつかった結果です。精算書の確認は滞在先からメールで行い、帰国した翌日に決済。我ながら綱渡りでしたが、仲介会社がメールベースで進めてくれたおかげで、海外にいながらでも手続きは滞りませんでした。
売却には半年近い時間がかかります。私のように予定と重なることもあるので、「売ると決めたら早めに動く」は、地味ですが本当に大事です。
まとめ|迷っているなら、まず「今いくら」を知ることから
不動産の一括査定は、魔法の道具ではありません。それでも、売却なんてやったことのなかった私が、損切りという苦しい局面で最初の一歩を踏み出せたのは、間違いなくこの一括査定のおかげでした。
私の体験をまとめると、こうなります。
- 査定額は会社によって800万円の差がついた。一番低かったのは販売元の会社
- 営業連絡のほとんどは丁寧だった。まれにしつこい会社に当たっても「決めたら断る」で対処できる
- 投資用物件は机上査定が基本。賃貸借契約書とサブリース契約書を用意しておく
- 「人気のある物件」と「収支が合う物件」は別物。興味を持たれなかった横浜の物件のほうがプラスで着地した
一社の言葉に振り回されず、複数の目で「今の本当の価値」を知れたこと。それが、傷をこれ以上深くしないための、確かな足がかりになりました。
もし今、新築ワンルームマンションを持っていて、このまま持ち続けるか手放すか迷っている方がいるなら――まずは「今いくらで売れるのか」を知ることをおすすめします。売る・売らないを決めるのは、その数字を見てからでも遅くありません。
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